恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
結局、月曜日は終日、大上部長は特別班の部屋には来なかった。

あおいさんのいう話では社長室での仕事がたてこんでいることと、『カントク』の今回の任務についての説明を兼ねた役員会議を行うとのことだった。

ダンボールにたまった伝票処理をあおいさんも一緒に手伝ってくれた。

社長令嬢とはいえ、あんなに演技派で武道に強い最強な女性を敵に回したら怖いなあと思ってしまったけれど、それでもこんな突っ走ってばかりのわたしに心を開いてくれるあおいさんをますます尊敬するし、仲良くなりたい気持ちが高まった。

「萌香さんにこうやって心のうちを話せて本当に嬉しかった」

「わたしでよかったんですか?」

「ええ。もちろん。友人はたくさんいるけれど、利害関係を求める人も中にはいてね。それを感じながらの人間関係にも疲れてしまって。『カントク』に入れてくれた大上部長に感謝しなくちゃいけないわね」

大上部長の名が出た瞬間、顔が熱くなっていることに気がつく。

「わたくしが大上部長とのデート、セッティングしましょうか。最高のロケーションで告白できる環境づくりを」

「いいですって。それよりも」

「何でしょう」

「もしよければ、あおいさん、仕事以外でご飯とか一緒にどうでしょうか?」

ああ、そういうことね、とあおいさんが目を輝かせて顔を近づけてくる。

「お友達ということね。ええ、もちろんよ。わたしくもそう思っていたところよ。どこにしましょうかね、ホテルディナーか、ウチのレストランか、それとも別荘か」

「ちょ、ちょっとそれは敷居が高すぎますって」

「わかりましたわ。今度、わたくしの家にご招待しますわ。その頃には大上部長とも一緒にご招待してもよろしくてよ」

「そ、そうじゃなくって」

「冗談よ。まったくかわいらしくてよ、萌香さん」

クスクスと笑うあおいさんの無邪気にみせる仕草はとてもかわいらしかった。
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