恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
大上部長の指先が震えている。
わたしも久々に大上部長に触れられて、ドキドキして大上部長の顔をまともにみられない。

少しずつ大上部長の唇がわたしの唇に迫ってきている。

あと少しで互いに唇に到達する。

と、思ったら、ドアががちゃりと開き、あおいさんが目を丸くして立ち尽くしている。

「あら、お邪魔だったみたいですわね」

と、くすくすと笑って部屋に入ってきたあおいさんだった。

「別にそういう関係じゃないんで」

大上部長の脇からするりと抜けてあおいさんの隣に立つ。
大上部長は珍しくわたしの方に顔をむけて、むすっとしていた。

「例の報告なんですけど」

あおいさんはわたしたちのしていたことなんて全く興味がなかったかのように、平然とした態度で大上部長に話しかける。

「で、どうなった?」

大上部長がさっきまでわたしの唇をなぞった親指の腹を自分の唇に触れさせた。
ちらりとわたしを試すような目で大上部長がみている。
胸がキュっと締め付けられそうになるけれど、あおいさんのいる手前、意識している自分が恥ずかしくなった。

見なかったふりをしてそのまま帰ろうとドアを開けようとしたとき、

「ちょうどいいわ、萌香さんにも話を聞いてほしいの」

と、冷静さを失わないあおいさんに言われ、立ち止まった。

「藍華さん、どうやらあやしげな人間と接触しているって話をきいたわ」

「藍華お嬢様とあやしげな人間?」

大上部長はわたしに関心をよせることはなく、眉間にしわをよせ、険しい表情を浮かべている。

「ええ。藍華さんの父親の会社と親交があったといって親密に接触を図ろうとしているみたい」

「その情報は鈴井さんと戸塚さんの情報からか?」

「はい。引き続き藍華さんの周辺を洗っていくそうです」

「そうか。わかった。あおいも引き続き頼むな」

話が終わったのか。
相変わらずわたしの出番は特になしなのかな。

「あの、わたしは」

「もういい」

さっきまであんなにわたしのことを求めていたくせに。

「ごめんなさいね。いろいろ引き止めちゃって」

と、あおいさんが困り顔をしている。

「いえ。お先に失礼します」

なんだか中途半端な気持ちのまま、自分の部屋へと戻った。
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