恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
「大切な人がいるんで、お断りします」

大上部長が、ちらりとわたしのほうに目をやったような気がした。
あからさまに振り返るのもどうかと思って気付かない振りをする。

「……聡、どういうことよ! ずっとずっと好きなの。そんな女よりあたしのほうが満足するわよ」

そんな女か。藍華さんよりはスタイルも顔もいいほうじゃないから仕方がないけれど。

「聡がそういう態度なら、考えがあるわ。あたしのさじ加減で聡の処遇はレベルアップするわよ。なんならお父様にかけよって社長の座についてもらっても構わない」

「俺はここで十分ですから」

「そうなると、ここの社長が黙っていられないんじゃない?」

そうきたか。
藍華さんのお父様にかかれば、篠崎社長も黙っていないだろう。
だからって、こんな状況じゃあ、今やっている仕事がはかどらない。
迷惑をかけているってわからないんだろうか。

わたしは席を立ち上がり、ゆっくりと藍華さんと大上部長の間へ歩み寄った。

「ここは遊びの場ではありません。仕事をしてちゃんとお給料をいただいている会社です」

黙ったままの大上部長を尻目に藍華さんに向けて語気を強める。
藍華さんは、わたしの態度にすぐに怒りの火がついた。

「そんなことわかってるわ。あたしは聡がいるから仕事をしようって気持ちでやってるの。椎名萌香のために仕事なんかやってないわ」

「藍華さん、会社を円滑に回すためにはあなたの力が必要なんです」

同じ会社にいる以上は助け合わないと。
そのために一緒に仕事をしているわけで。
藍華さんは一体ウチの会社に何を求めているんだろう。
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