恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
倉岩がいなくなり、ロビーは静寂に戻る。
時間が経つにつれ、事の重要に気がついたのか、藍華さんは黙ったまま、倉岩が出て行ったロビーの自動ドアをみつめていた。

「……何するのよ。しかも勝手に」

「あのひと、どういうひとかわかってつきあってるの?」

少し口調を強めにしたところ、藍華さんは顔をこちらに向け、すかさず威嚇するかのようにわたしを睨んだ。

「つきあうってしっかりしたビジネスパートナーとして信頼の置ける方よ」

「あのひとはね、うちの会社を操ろうとしてるひとなの」

ジャケットのポケットからスマホを取り出し、早乙女さんにスマホでとっておいた写真をみせてあげた。

「パンフレットをもらったの、このひとだから」

津島と仲睦まじく会社のエントランスで楽しそうに微笑みあっている野村加奈とのツーショット写真だ。
津島の浮気を気にしていたとき、明らかに普通の女子社員と扱いかたや接し方が違うと怪しんで撮ったものだった。
こんなところで役に立つなんて思ってもみなかったけれど。

「わたしの元彼をそそのかしたうえで、会社を乗っ取ろうとしてたやつ」

ようやく読み込めたらしく、藍華さんは顔を青ざめた。

「……あたし」

「もう大丈夫だから」

ガクンと膝から落ちそうになったところをしっかりと受け止めた。
大上部長じゃなくてごめんねと心のなかでつぶやきながら。

「よくやった」

しばらくして大上部長とあおいさんがわたしたちの様子をみてこちらへやってきた。
藍華さんの無事が確認されたことで二人とも安堵の表情を浮かべている。

「聡……篠崎さん」

「今回はわたくしたちの出番はありませんでしたわね」

「出番?」

「管理部特別課、通称カントクだ」

カントクの名前を知っていたのか、早乙女さんは目を丸くした。
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