恋する任務は美しい〜メガネ上司の狼さんと訳あり隠密行動〜
「今月末、社内の創業記念パーティーが行われる。そのときに社内の責任者はもちろん、取引先の担当者も招かれる。そこで津島と野村が何かしらの動きを見せる可能性がでてきた。そこへ我々は潜入することが決まった」

といっても、大上部長は管理部特別課の代表として、あおいさんは秘書の仕事で出席する。
一方の戸塚さんと鈴井さん、横尾さんは子会社から出席になっていて、わたしは給仕係として接触することとなった。

津島と野村加奈は何を企んでいるんだろう。
津島は責任者として出席するのはわかるけれど、野村加奈の役割がわからない。

「お前は近づくだけでいい。下手なマネはするな」

「わかりました……」

「変な動きをみせたら計画が台無しになる。気をつけろよ、椎名萌香」

大上部長が最後に念を押してミーティングが終了した。

「どうして今回、津島と野村加奈なんですか」

つい、二人の名を大きな声で叫んでしまった。
近くにいたあおいさんが目を丸くしていた。

「尋常じゃなさそうだな、椎名萌香」

大上部長は自分の席につき、わたしの顔をみることもなく、パソコン画面に目をやりながら話しかけてきた。

「それは……」

答えに困ると、パソコン画面からわたしの顔を鋭く睨んでいた。

「感情に流されるなら、今回の仕事ははずれてもらうぞ」

「……大丈夫です」

「それなら問題はないが」

いろんな感情が渦巻く。
わたしを裏切った男と裏切りに加担した女。
見返すにはいいチャンスだ。
< 84 / 149 >

この作品をシェア

pagetop