復讐の女神
「え?知らなかったんですか?一柳さんから社内メールで来てません?」

「い、いえ。来てなかったかと・・・・」

「そう・・・。是非来てください。草津なので
温泉に浸かって疲れを癒しましょう」

そう言うと森村はトイレを後にした。
立ち去る時、ほのかにフローラルな香りがして
ゆりは良い匂いだなと思った。

ゆりがトイレにいる間、
事務所ではゆり宛に石井から電話がかかってきた。

ゆりが不在だったため一柳が代わりに応対した。

「あれ、七瀬さんは?」

「今、席外してますけどー?」

「じゃぁ、伝言お願いしたいんだけど
貨物の納品は26日の土曜日に決まったから手配しといて。って」

「はーい、了解しましたー」

電話を終えると、ゆりが事務所に戻り席に着いた。
その後、続いて片山課長が入ってきてゆりに近づいた。

「七瀬さん、これ先日預かってた資料だ。」

ゆりが片山課長の方を見上げ、資料を受け取った。

「例の仕分けの件だが俺の方でやっておいた。
あとでメールで送っておくから確認しといて」

そう言われてゆりは慌てて「あ、あの仕分けは私がやるはずじゃ・・・」と反論すると
「ボタン押すだけだから俺でやっておいた。メールで送った詳細は七瀬さんがチェックしたら
石井にも送っといて」と片山課長は応えた。

「あ、ありがとうございます」

ゆりがお礼を言うと片山課長は自席に着いた。

「仕事やってもらったんすね。良いなぁー」と太田が言うと
「あ、あの膨大な数だったので片山課長にマクロでやってもらったのです」と
ゆりは報告した。

その様子を伺っていた一柳はタイミングを見計らって
ゆりに声をかけた。

「そう言えば石井さんから七瀬さんに伝言がありましたよ。」

「あ、はい。なんですか?」

「納品日は27日の日曜日ですって。」

「分かりました。ありがとうございます。」
そう言うとゆりは輸送手配に取り掛かった。

その様子を横目で見ながら一柳はクスッと微笑んだ。
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