黄昏の千日紅





冷たい人形と呼ばれていた私には、昔から友人と呼べる存在が居なかった。



大切に想える存在も、今は居ない。



出会いに期待などせず、そして別れを惜しむこともなく、とても楽だ。



そう、楽だ。


私には何もない。


私は今も、これからも、ずっと一人なのであろう。





空っぽなのだ。

風がすうっと体を突き抜けて行くように、酷く空っぽだ。


私という人間は、ただ息をし、空腹を感じればそれを何かで満たし、睡魔が襲ってくれば眠りにつく。




そんな当たり前のような” ただ生きる ”という生活を、もう何年も一人でやってきている。




果たして、自分の存在価値はあるのであろうか。存在理由などあるのであろうか。



死んでしまってもいい。
しかし、どうやって死ぬのか、効率的な死に方は一体何なのか。





ただ考えれば考える程、面倒臭くなって結局自分を殺めることなど、到底出来そうにない。



未遂で苦しみ、結局生き延びてしまう方が、こんなくだらない世の中で生きることよりも辛いように思う。



私は誰かが自分を殺してくれるのを、心のどこかで待っているのかもしれない。




ただ死ぬまで生きる。


私はただ、この命が尽きるまで息をする。





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