黄昏の千日紅





祖母の葬式では、涙は流れなかった。
最早、絶望しかなかった。


私の最後の希望の光を失くした瞬間が、その時だった。






祖母が亡くなってからは、すぐに児童施設へと預けられた。



その時からだったと思う。
私の性格が歪んで行ったのは。



誰と仲良くなる訳でもなく、常に一人で行動していた。
寄って来てくれる子達は居たが、私はそれを拒んでいた。





再び誰かが自分の元を離れていくことを怖れたから。


大事なものを失くす恐怖を、二度と味わいたくなかったから。





そんな事は、私のエゴだとは分かっていたのだけれど。





私は、狂ったかのように学校でも施設でも、ひたすら勉強をした。




ノートがびっしりと細かい字で埋め尽くされ、教科書が黒くなってぼろぼろになってしまうくらいに。
時に、悪夢にうなされるのを怖れ、寝る間も惜しんで机に向かった。




学校から帰れば、直ぐに部屋に籠ってペンを走らせた。




中学に入ってからもそれは一切変わることなく、友人一人作らず、ずっと本と向き合っていた。



勿論学校では浮いていたが、気にすることはなかった。




最早、周りの人間が南瓜だとか、馬鈴薯にしか見えないくらいに、一人の世界にのめり込んでいた。




それくらい、周りの人間のことが心底どうでも良かった。







< 157 / 284 >

この作品をシェア

pagetop