黄昏の千日紅
「…あの時。初めて目が合った時も、保健室で会った時も、何も言わなかった癖に」
「言えなかったんだ」
「…は」
「初め見た時は、余りにも大人っぽくなってて、少し似ている程度だと思ってた。だけど、保健室で藍川って聞いた時に気付いたんだ」
「………」
「それに、俺が話し掛けたら、嫌なこと思い出させちまうかもしれないって思って…」
__嫌なこと?
私の両親のことか。
「親が再婚してから自由に動けなくなった。高校も、婚約者も、勝手に決められて。俺にはずっと心に決めた人が居るのに」
こんやくしゃ?
…婚約者?
そうか、それを言いに。
そうか。
そういうものなのか。
私とはつくづく、住む世界が違う。