黄昏の千日紅






「神崎様ですね、お待ちしておりました。どうぞ、こちらへ」







夫が仕事を終えてから、私達は” cameria ”というフランス料理店を訪れた。



どうやら、彼の旧友がここでシェフをしているらしい。



reserveと書かれたアンティーク調の札が置いてある席に促され、私達は向かい合って席に座った。




「予約してくれてたんだ」


「まあな」


「ありがとう」


「コースで出てくるけど、いいよな?」


「うん」





__嬉しい。



私はこのような高級感漂うお店にあまり来たことがなかったからか、妙に緊張してしまって、少し居心地が悪い。



何となく肩身が狭くなったような、落ち着かない気分。




周りに座ってワインを嗜んでいる方々を一瞥すると、皆が裕福そうに見えて思わず自分の服装を見直す。




「大丈夫だよ。恋音は綺麗だから」




こういう所だ。私の少しの動きに敏感で、すぐさま気が付いてくれる所。



優しい彼は学生時代から何にも変わっていない。








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