黄昏の千日紅
「素敵なお店ね」
「ああ、まだオーナーは若いらしいけどな」
私は「へぇ」と、一つ歓喜に満ちた声を零すと、彼はふっと笑みを浮かべる。
あまり笑わない彼が、ふとした瞬間に表情を緩めると、私の脈が速くなる。
結婚してから、それはずっと変わらないことだ。
暫くすると、先程案内してくださったホールのウェイトレスが目の前のグラスにワインを注ぎ、一礼して去っていく。
「乾杯」
彼がグラスを少し上げたのを合図に、私もグラスを持ち上げ少し傾けた。
心地の良いBGMを耳にしながら、私達は芸術作品のようなコース料理をゆっくりと味わう。
一通りの料理を楽しんだ後、食後の珈琲を飲みながら一息ついていた。