黄昏の千日紅
悪化をすることもなければ、治ることもないということか。
それは一生、彼女と会話することは出来ないということ。
彼女に僕の声を届けることも、彼女の声を聞くことも出来ないということ。
僕はその文章が、ぐるぐると頭の中を駆け巡る。
手話のページを、ぱらぱらと捲ってみる。
イラストで描かれた手の動きを真似して練習してみたが、合っているのかは全く分からない。
それにしても、彼女がもし手話をしなかったら意味はないではないか。
いや、物は試し。やってみよう。
僕はその晩、眠りにつくことが出来ず、朝まで本を眺めていた。