この夏の贈りもの
「俺たちのためにこんなにも頑張ってくれている。普通なら、できないことだ」


あたしはブンブンと左右に首を振った。


あたしはこの霊媒師という仕事に逃げているだけだ。


みんなのためにではなく、自分のためだ。


花火に火が付き、グラウンドが明るく照らしだされていく。


強すぎない風が吹いて煙を綺麗にさらって行ってくれていた。


「……綺麗」


3色花火はピンク、緑、黄色の順番で色を変えていった。


「チホは花火が好きだ」


唯人があたしの花火を見てそう言った。


「……うん」


「チホは川が好きで花火が好き。それに以外と負けず嫌いだ」


「負けず嫌い?」


意外な言葉にあたしはそう聞き返した。


「あぁ。山で競争をした時、息を切らしながらもずっと走ってただろ。その時思ったよ、チホは負けず嫌いなんだなって」


そう言われたらなんだか恥ずかしくなってしまう。


確かに、小学校の運動会でも負ける事が嫌でいつも全力を出していたっけ。


ちょっとした勝負ごとになるとつい熱くなってしまう。
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