この夏の贈りもの
☆☆☆

教室の窓から朝日が差し込んでくると、裕の体のモヤが少しだけ薄くなった。


「裕、大丈夫?」


あたしが声をかけると、裕はゆっくりと目を開けた。


その目はどうにかあたしを見つめ返している。


「あぁ……」


頷いて答えるその声は、トンネルの中のように響いて聞こえる。


悪霊特有の変化だ。


悪霊たちはこのどくとくの声色を使って、人間たちを恐怖へ落としいれる。


「動ける?」


「どうにか」


裕はゆっくりと体を起こした。


まるで何年もそこにいたかのよに体が床にへばりつき、立ち上がると皮膚が床から剥がれていくベリベリという嫌な音が聞こえて来た。


「開かずの教室まで行こう」


「おい、引き合わせて大丈夫なのか?」


和が不安そうな表情でそう言った。


「わからない。だけど、裕の心残りはあの教室の悪霊なんだよ」


あたしはそう答え、裕の歩調に合わせて歩き出した。


ゆっくりゆっくりと教室を出る。
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