この夏の贈りもの
「開かずの教室には、ホナミがいるんだ」


歩きながら裕がそう言った。


「ホナミ?」


「そう。俺が生きていた頃から、ずっといる」


そういう裕に、驚いた表情を浮かべたのは唯人だった。


「お前、霊感があったのか?」


「あぁ……」


裕はそう言い、笑って見せた。


その笑顔も苦しそうだ。


「そんな話聞いたことがなかったぞ」


「言っても、どうせ信用しないだろ」


裕がそう言うと、唯人は「確かに信用はしなかったかもな」と、頷いた。


「毎日会いに行ってた」


「幽霊に?」


「あぁ」


頷く裕に、唯人はげぇっと舌を出して見せた。


「ホナミはいい子なんだ」


唯人の反応にムッとした表情を浮かべて裕は言う。


2人で会話をしているからか、裕を囲んでいる黒いモヤが薄くなり始めていた。
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