この夏の贈りもの
その手を見た時、あたしは自分がモンペ姿であることに気が付いた。


胸元には名前が書いてあるネームが縫い付けられている。


戦時中の服装だと、すぐに理解した。


「来年はまた必ず夏祭りに行こう」


「そうだね」


あたしは頷き、唯人と約束を交わす。


「今日はその約束をするためと、もう1つマヤに伝えたいことがあってここへ呼んだんだ」


「なに?」


あたしがそう聞くと、唯人は一旦あたしの手を離し、そしてあたしを真正面から見つめた。


カーキ色の帽子が邪魔をして唯人の表情が見えなくなる。


「昨日、俺に赤紙が来た」


唯人の言葉に、周囲の時間が停止したような気がした。


赤紙……。


「嘘でしょ」


思わず、そんな声が漏れていた。


「名誉なことだ」


その言葉とは裏腹に、唯人の声は震えていた。


「でもっ……」


「マヤ。だから今お前と約束をしたいんだ。日本軍は必ず勝つ。勝って俺は戻って来る。だから来年、一緒にこの神社の夏祭りに来よう」
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