この夏の贈りもの
和の弱弱しい声が腹立たしかった。


これじゃまるであたしが和をイジメているようだ。


本当は逆なのに。


「手、離してくれる?」


「嫌だ」


「離してよ!」


「嫌だ!!」


和は叫ぶようにそう言い、あたしの体を抱きしめて来た。


なんて自分勝手なんだろう。


告白して、振られたと思い込み、あたしを黙らせるためにイジメた!


それがなければあたしはもう少し明るい性格でいられたかもしれないのに。


悔しさで涙が滲んで生きた。


だけど、それよりなにより、和の手が優しすぎて涙が出て来そうだった。


あれほど嫌な思いをさせられたのに、なんでこんなに優しい手をしているんだろう。


まるで別人みたいだ。


「大空はちゃんと好きな子に気持ちを伝えたよな」


あたしを抱きしめたまま、和は言った。
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