恋のルール教えて下さい ~憧れの課長と大人の恋~
彼の髪の匂い。

さらっとした髪に触れると、すごくいい匂いがするのだ。

そんな彼の匂いを、めいっぱい吸い込んだから、それが完璧に再現されて手が止まってしまう。

おまけに、脳内で彼の言葉が勝手に再生される。

『君のことは……本気だから。
このまま、安心して俺のところに来て。和泉?』そんな真剣な眼差しで訴えられても。

うそつきじゃないの。

何が真剣に付き合いたいよ。

お願いと彼が懇願する。そうするのも、真梨香さんに別れてもらうまでだ。

私のことなんか、単なるゲームくらいにしか思ってないくせに。

彼女と別れたら、彼は自由になって、好きな人と付き合える。

彼の好きな人って?


何してるの。どうでもいいじゃない。

彼がここにいるわけじゃないのに。

集中しなきゃ。

ぼおっとしてる場合じゃない。仕事しなきゃ。仕事。



「あの……」美沙ちゃんが私に声をかけて来た。


「ん?」私は顔をあげて美沙ちゃんを見る。

集中してないの、美沙ちゃんにも分かっちゃったのかな。


「どうかした?」

私は美沙ちゃんに笑いかけ、背筋を伸ばした。


「佐野さんが、探してましたよ。さっきここも来てましたよ」

「佐野君がここに?」

何で佐野君がここに来るの?

「佐野さんに、村西さんまだ戻ってないって言ったら、変だなあって言ってましたよ。
先輩、どこ行ってたんですか?

あっ、そんなことより。
佐野さんから伝言です。村西さんが戻って来たら、営業部まですぐに来て欲しいって」
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