ダイエットの神様
ホットキャッツ
 昔、神々は人間の近くにおわ
し、人間の言葉に耳をかたむけ、
願いを叶えたもうた。しかし、科
学が発達すると人間は神々の存在
を信じなくなり、神々は人間と距
離をおかれるようになられた。

 2009年、春
 高校1年生の美河紗枝は、クラ
スの中では目立たない存在だっ
た。
 同じクラスには片思いの島永優
斗がいたけど、告白する勇気はな
かった。
 優斗はそんなことには全然気づ
かず、紗枝の前でも平気で別の女
の子といちゃいちゃしていた。

 ある日、紗枝は何気なく入った
化粧品店で化粧品を眺めていた。
それを同じクラスの田崎麻美が、
偶然目にした。
 麻美は紗枝の消極的ではっきり
しない態度に、いつもイライラし
ていた。
(そうだ。いいこと思いついた)
 麻美は仲間に、
『紗枝が化粧品店で、万引きをし
て捕まった』と、携帯電話でメー
ルを送った。

 次の日、紗枝の万引きの話は、
クラスメートにも知れ渡ってい
た。
 紗枝が教室に入ると(いつもそ
うだけど)いつも以上にクラス
メートが、目をそむけているよう
に感じた。
(何かあったのかしら?)
 紗枝は数少ない友達に近寄っ
た。
「ねぇ、ねぇ……」
 友達に話しかけようとすると、
気まずそうに教室から出て行く。
 紗枝はひとり、ポツンと席に
座っていると、優斗が笑いながら
やって来た。
 紗枝はそれに気づき、ポッと顔
が赤くなった。
 優斗はささやくように、
「いい度胸してるよ。でも、化粧
しても、お前じゃな……」と言っ
て、笑いながら教室から出て行っ
た。   
(えぇ、何のこと……?昨日、化
粧品を見てたこと……?何で知っ
てるの……?それがどうしたって
いうの……?)
 紗枝の頭は混乱した。
 その日の夜、紗枝は誰か分らな
い携帯電話のメールで、自分が万
引きしたという話が流れているこ
とを知った。
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