ダイエットの神様
 紗枝はブスというほどではない
けど、美人で華やかなほうではな
かった。
 根も葉もない万引きの話で傷つ
くことはなかったが、優斗に言わ
れたことがショックで、しだいに
高校には行かなくなり、引きこも
るようになってしまった。

 1学期の終わり頃だった。

 紗枝は家では何もする気力がな
い。寝て、起きると食事をして、
また寝る。
 部屋のカーテンは閉めっぱな
し。

 そんな紗枝は一人っ子で、父親
は商社に勤め、今はイタリアに単
身赴任をしていた。
 母親は超楽天的で、
(そのうち面白いこと見つけるで
しょ。怠け犬でも飼ってると思え
ばいいわ)と、平然としていた。

 そんな生活が1年も続いた。

 ある日、紗枝が目を覚ますと、
腹痛が襲った。
 トイレには行っていたものの、
1年間、排便はほとんどない便秘
状態だった。
 起き上がった紗枝の姿は、デッ
プリ太り、お腹の周りは浮き輪を
つけてるみたい。
 紗枝はなんとかトイレに入った
けど、出ない。
「お母さん、お母さん、お……」
 トイレから聞こえるかすかな声
に母親は気づき、
「紗枝ちゃんどうしたの?」
「出ない」
「出ないって、何が?」
「何がって、決まってるじゃな
い」
「……あらやだ」
 結局、排便できないので、母親
に連れられて近くの病院まで行っ
た。
 紗枝は病院でお尻を出し、医者
に大きな注射を使って浣腸をされ
た。
「うぅぅっ」
「はいOK、しばらくがまんし
て」
「がっ、がまんできません」
「だめだよ。もうちょっとがまん
して」
「うぅうぅ」
「しょうがないな。じゃ、トイレ
行って」
 紗枝は今までにない早さでトイ
レに駆け込んだ。
 さすがにこれは恥かしく、それ
からは、毎日排便するようにし
た。
 超楽天的な母親も少しは心配に
なり、ある名案(?)を思いつい
た。
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