ダイエットの神様
 ある日、お客さんの波が途切
れ、紗枝が一息つこうとした時、
紗枝の前に一人の女子高生が立っ
ていた。
 その女子高生はかなり太ってい
て、うつむいたままだったので、
紗枝は気づかなかったが、以前、
紗枝が万引きをしたという話を流
した田崎麻美だった。
 麻美も紗枝があの時より痩せて
いて、頭にはバンダナを頭巾のよ
うに被り、着ている物や堂々とし
た態度が以前とは全然違うので気
づいていなかった。
「あのー。1つ下さい」
「はい」
 紗枝は手早くホットキャッツを
作り、袋に入れて麻美に手渡し
た。
 麻美は料金を紗枝に渡しながら
聞いた。    
「あのー。これって食べても太ら
ない。痩せるって、噂で聞いたん
ですけど、私でも痩せますか?」
 麻美は泣いているようなかすれ
た声だった。
「それはなんとも言えないわ。で
も食べることばかり気にしてても
ダメよ」
 紗枝は麻美に近づいて言った。
「排便することが大事なのよ。私
も太ってたけど、もやし料理を食
べてたらお通じが良くなって、毎
日、2、3回、排便したから痩せ
たの。お腹の中には自分が思って
るより3倍の便がたまってるの
よ。だから一度じゃ出ないから
ね。まあ、ダイエットするってい
うより習慣にするって感じね」
 紗枝は麻美を元気づけるよう
に、
「あなたも大丈夫よ。あきらめな
いでね」
 麻美はお辞儀をして立ち去っ
た。

 麻美はそれからしばらく紗枝の
アドバイスを聞くために立ち寄る
ことがあった。    
(どこかで会ったことのあるよう
な)
 ふたりともそう感じていた。
 しばらくすると紗枝のアドバイ
スも出尽くし、それで麻美はぱっ
たりと来なくなった。
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