ダイエットの神様
 生活を見直し始めた紗枝に、母
親は、
「紗枝ちゃん、お父さんから連絡
があって、どうしてもお父さんの
ところへ行かなきゃいけなくなっ
たの。紗枝ちゃんはお留守番して
てくれる?」
「えぇ、何で?」
「お父さん、私の手料理が食べた
くなったんだって」
「何よ、それ。もう分ったわよ。
行けばいいじゃん」
「様子見たら、すぐ帰ってくるか
らね」
 母親の名案は成功(?)し、父
親のもとに旅立っていった。
 ひとりにされた紗枝は、相変わ
らず、何もする気が起きなかっ
た。

 しばらくは家にある食べ物でし
のげたが、とうとうすべて食べ尽
くしてしまった。
(買い物に行かなきゃダメか)
 その時、母親からお金をもらっ
ていないことに気づいた。
 どこを探してもお金を置いてい
る様子はない。
 しかたないから自分の貯金を使
うことにした。でも、貯金を確か
めてみると、残高はわずかだっ
た。
(生きてやる。うぅぅ、お母さ
ん)
 重いカラダでヨロヨロとスー
パーまでたどり着いた。
 昼前のスーパーは主婦の戦場。
 どう見ても紗枝の姿は、人目を
引くはずなのに、みんなそれどこ
ろじゃない。
 特売品から特売品へ、蜂のよう
に探し回っている。その様子に紗
枝は圧倒され、とりあえず、食パ
ンとインスタントラーメンを買っ
てスーパーを出た。
(お母さんも毎日、あんなこと
やってるのかしら?)
 紗枝はもの思いにふけながら家
に帰った。
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