雨を待ちわびて

何となく騒がしい事に気づきもしなかったのか。まあ、寝てたなら解らないか…。……。

「人が亡くなりました。ここのマンションのゴミ集積所で。まだ詳しい事はこれからなのですが、隣にお住まいの方はご存知ですか?」

…。

「あ、面識はあるかという事です」

「私は…、仕事も家ですし…ご覧の通り、想像通りの自由な生活をしています。時間に不規則ですし、お会いした事は無いと思います」

「男性か女性かは、ご存知ですか?」

「え?それは…、女性じゃないですかね」

「何故、そう思われます?」

「あー、そうですね、部屋から…何ていうか、乱暴に物を扱うような音も聞こえて来ませんし。雰囲気だけの話ですけど。ドアの開け閉めとか静かですし。あ、コツコツ歩く音で女性かなと…」

「なるほど」

「…え?亡くなったって、隣の人なんですか?」

「いえ、それは、まだ…。すみません、昨夜はどちらに?」

「…部屋です。昨夜もその前も、いつも、ちょっとした買い物に出る以外は部屋に居ますから」

「お一人で?」

「はい」

「パソコンはずっと?」

奥に見えたパソコンを指して聞いた。

「はい、ずっと弄っていました」

履歴はあるという事か。

「弄らない時間もありますか?」

「それは…、ありますよ。細かい事を一々言えば、トイレにも行きますし、風呂もまあ入ります。完全な引きこもりという訳では無いので、買い物にも出ます、夜ですが」

「解りました。あ、隣の部屋から、最近、普段聞かないような物音がしたとか、ありませんでしたか?」

「最近とは?」

「ここ2、3日といったところでしょうか」

「…特には、気になりませんでした」

「そうですか、有難うございました。また、お伺いするかも知れません。
あ、すみません、もう一つだけ、今朝は部屋に?」

「今朝?何時の事です?」

「明け方から私達が来るまでの間はどちらに?」

「ずっと部屋です」

「お一人で?」

「……ずっと一人です」

「有難うございました」
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