雨を待ちわびて

「…犯人、逮捕されたんですね」

「ああ。……変質者だった」

「……そのようですね」

未だ、言えないのか?

「ルーシー…今のままでいいのか?」

敢えてルーシーと呼んでみる。

「私…、このままで、…今はこのままでいい」

「そうか。本当の事、…本当の名前、言いたくなったら言ってくれ。俺は、ルーシーもいいけど、あんたの本当の名前もきっと好きだと思う」

「片霧さん…。片霧さんて、下の名前はなんて言うんですか…」

「ん?そうだな、何にしようかな。俺も考えておこうかな。
いや…考えるまでも無い。俺は…亘だ。勿論、本名だ。
俺の名前は片霧亘。ついでに34歳、独身だ。
結婚歴無し。従って離婚歴も無し。結婚願望も、生涯無し」

…。

「…終わった後、あっちに行くな。こんな狭い部屋で目障りだ。…こっちに一緒に居ろ」

あ。肩を抱かれた。

「ベッド、デカイの買うか…」

…。

「このままがいいか?大分ギシギシいってる。ちょっとだけ大きいのにするか…。それともくっついていた方がいいなら、またシングルにするか」

…。

「…私、私が…守田直なんです。不知火さんは私の為に…柳…」

ん、んんん。顔を挟んで口を塞いだ。

「直…。やっぱりいい名前だったな。私が守田直なんです、までだ。後は聞かない。…今は何も話さなくていい…」

あ、…。片霧さん…。

「直…。俺に捕らえられたらおしまいだって言っただろ?
これからは直が楽しい事だけをしたらいい。直の事はずっと守るから。素直になっても大丈夫だ。甘えろ…楽に生きろ、…な?」

「でも、…私…私は…」

何もかも汚れきっている。

「俺を見ろ。俺を何だと思ってる。本物のおまわりさんだぞ?…大丈夫だ。守田直で、大丈夫だから」

「……はい。私も…、結婚歴はありません。だから離婚歴もありません。結婚願望は…これから先、未だ…」

私のような汚れた人間でも、いいと言ってくれるなら…。

「まぁ…、ん。取り敢えずベッドからだ。買いに行くぞ。…大丈夫だ。俺と一緒なら寝られるから。…大丈夫だ」

ん、あ、…ぁ…。熱い口づけは次第に下へと移動していく。

「は…い…」

…片霧さん。

ブー、ブー。

「はぁ…、チッ。はい片霧。……、解った、了解。………あ?…言ったさ。テメェが邪魔するからだろうが。…すぐ行く」

スーツを手早く着た。黒ずくめの男が私に謝る。

「直、悪い、仕事だ。いつ帰るかまだ解らない。…本当のサイコパスかも知れない。行ってくる。出たら鍵は必ずしといてくれ、いいな」

「はい、気をつけて。ぁ…」

頭を押さえられて口づけられた。……片霧さん。

「ん…じゃあな」

はぁ、雨か…。ゔ〜…何だか色々…ゾクゾクするな…。
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