雨を待ちわびて

「直?もう、いいんじゃないか?川喜多直海に会った事を思い出して、教えてくれようとしたんだろ?」

「はい」

「だったらもういい、有難うな、直、…もういいよ、有難う、よく解ったから」

話す為には、思い出したく無い事まで話さないといけなくなるのに。

「はい。私も、有難うございます」

「ん?」

「花です。生まれて初めてなんです。あんな大きな花束を貰ったのは。…嬉しかった。凄く嬉しかったです」

「俺も初めてだ。人に花束を贈るなんてな。…もう花の名前、忘れちまった」

「あー、…でも私も、カランコエ?自信無い、知らない花だったから」

「あー、そのなんとか。挿し木?挿し枝か、にしたら育てられるらしいぞ?花屋さんが熱心に教えてくれた。
普通、鉢植えで売ってるらしくて、無理矢理切り花にして貰ったんだ」

「じゃあ、先生に言って、どこか土のあるところに挿してもらっとこうかな。そしたら、鉢植えにしてずっと育てられるかも」

「…根付くまで退院しないつもりか?」

「そういう事では…無いけど…」

「直?そろそろ眠くなって来たんじゃないのか?」

…身体が温かい。習慣づいてる就寝時間はとっくに過ぎてる。

「……な、お?」

「……は…い」

どうやら睡魔が来たみたいだ。弱ったな。ここには何も無い。取り敢えず、上着を掛けるか。
ゆっくり片腕ずつ脱ぎ、背中に掛けた。
直には随分大きいんだな。

直を抱いたまま、俺もいつしか眠りについていた。


「…おや、おや。中々戻って来ないと思ったら、やはり寝ちゃいましたね。薬を使わずに眠れたようですね。
片霧さんは、身体、痛くなりませんかね」

持って来ていたタオルケットを掛けた。

「朝、事務長が驚かなければいいけど」

それまでには起こしましょう。
< 43 / 145 >

この作品をシェア

pagetop