雨を待ちわびて
「直?もう、いいんじゃないか?川喜多直海に会った事を思い出して、教えてくれようとしたんだろ?」
「はい」
「だったらもういい、有難うな、直、…もういいよ、有難う、よく解ったから」
話す為には、思い出したく無い事まで話さないといけなくなるのに。
「はい。私も、有難うございます」
「ん?」
「花です。生まれて初めてなんです。あんな大きな花束を貰ったのは。…嬉しかった。凄く嬉しかったです」
「俺も初めてだ。人に花束を贈るなんてな。…もう花の名前、忘れちまった」
「あー、…でも私も、カランコエ?自信無い、知らない花だったから」
「あー、そのなんとか。挿し木?挿し枝か、にしたら育てられるらしいぞ?花屋さんが熱心に教えてくれた。
普通、鉢植えで売ってるらしくて、無理矢理切り花にして貰ったんだ」
「じゃあ、先生に言って、どこか土のあるところに挿してもらっとこうかな。そしたら、鉢植えにしてずっと育てられるかも」
「…根付くまで退院しないつもりか?」
「そういう事では…無いけど…」
「直?そろそろ眠くなって来たんじゃないのか?」
…身体が温かい。習慣づいてる就寝時間はとっくに過ぎてる。
「……な、お?」
「……は…い」
どうやら睡魔が来たみたいだ。弱ったな。ここには何も無い。取り敢えず、上着を掛けるか。
ゆっくり片腕ずつ脱ぎ、背中に掛けた。
直には随分大きいんだな。
直を抱いたまま、俺もいつしか眠りについていた。
「…おや、おや。中々戻って来ないと思ったら、やはり寝ちゃいましたね。薬を使わずに眠れたようですね。
片霧さんは、身体、痛くなりませんかね」
持って来ていたタオルケットを掛けた。
「朝、事務長が驚かなければいいけど」
それまでには起こしましょう。