雨を待ちわびて
んんー、片霧さんの言葉通りね。この部屋…何もない。
ベッド…。冷蔵庫、洗濯機、乾燥機…テレビ。家電だけは揃ってる。それから備え付けのクローゼット…。
カーテンはしっかりした遮光なんだ。眠りに帰ってるだけみたい…。
服も乾いたみたいだ。下着は乾燥機の中にあった。
シャワーで汗を流す程度に、また、お風呂を使わせて貰った。
はぁ…、身体の芯が熱い、熱が篭ってる、怠い。正直、起きているのが辛いくらい疲れている。
…。
ボディーソープ、借りますね。…この香り、……好きかも。…ん、あ…こんなところにキスマーク。全然、されてる時は気がつかなかった…それどころでは……。胸元に触れて見た。……はぁ。……片霧さん。
…少し買い物に行こう。
カーテンをちょっとだけ開けて外を見た。はぁ、誰も見えない。…雨も上がっている。…薄い虹が架かってる。いい事あるかな…。
…バッグ。良かった。これが無いと大変。財布もカードも、身分証明も、バッグが無ければ全て失うところだった。
中、濡れてしまったかな。やはり、滲みている。出しておけば乾くだろう。
財布だけ持って行けばいいか。
あ、靴。濡れてるか…。当然よね。気持ち悪いけど、そんなの言っても仕方ない。
ンーッてモーター音がする。音のする方、玄関に行ってみた。
あ、シューズドライヤー。差し込んでくれていたんだ。
履ける程度には乾いているみたい。…へぇ。こんな物は持ってるのね。
……女の人、居るのかも知れない。
片霧という男。おまわりさん、て事は、刑事さんて事であっているだろう。呼び出しがあって出掛けてしまった。休みって言ってたのに、…仕事なんて。…なんかあったって事だ。
軽く化粧をして服を着たら…どこかで食事をしよう。それから部屋に帰ってみよう。
とにかく、何があっても無くても、お腹は空く。これは嫌という程、ずっと実感してた…。嫌でも生きてるという事を考えさせられた…。
特に、今は空きっ腹に刑事さんとシた事で、空腹は増してしまった。…妙に充たされてしまったモノとは裏腹。
冷たいシベリアンハスキーの目だと思ったのは、得体のしれないものを見る、刑事の目だった訳だ。