ロストマーブルズ
 自分について考えながら電車に揺られ、そして乗り換え駅まで来ると、すれ違いざまにある人物を見てはっとした。

 キノを追いかけていたストーカーがいた。

 もしかしたらこの男、キノの正体に気がついていてそれで追っかけをしているのかもしれない。
 これもまた話が繋がったように思った。

 危険な存在かもしれない男の後を追いかけ、ジョーイはそいつの肩を叩いた。
 その男は振り向き、見知らぬジョーイを目の前にして戸惑っていた。

 見れば見るほど冴えない男だと嫌悪感を抱き、ジョーイはきつく睥睨する。

「あの、何か?」
 おどおどした声だった。

「あのさ、あんた、キノを追いかけてるだろ」

「キノ? あっ、もしかしてあの黒ぶちメガネの女の子ですか」

「そうだ。いいか、彼女に近づくんじゃない。お前彼女が誰だかわかってんだろ」

「えっ? なんのことかわかりませんが、僕は彼女と直接話をしたいんです」

 冴えない面がどことなくとぼけているように見える。
 ジョーイは苛立った。

「だからそれが迷惑っていうんだ」

「だけどどうしても会いたいんです。そういうあなたは一体キノさんのなんなんですか?」

「えっ?」

 ジョーイはキノを知ってるが、まだ友達とも呼べる仲でもなかった。
 彼女のことが気になりすぎて知り尽くしていた気分になっていたが、実際ジョーイの立場はなんだろうと自分自身考え込んでしまった。

 凄みを利かせていた顔が、間の抜けたぽかんとした表情になり、暫く沈黙が続いた。

「あの、僕ちょっと急いでいますので失礼します」

 ちょうど逃げられるタイミングだと、ジョーイの気が抜けているときにストーカーはさっさと去っていった。
 ジョーイはまるで海岸に取り残された漂流物のように、もの悲しげに置き去りにされていた。
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