ロストマーブルズ
「痛いだろ。お前とかかわると必ずイラつく」

「それ、酷くない? 私たち友達でしょ。冗談くらい言ってもいいじゃない。これって気を使わないで付き合える理想の関係だよ」

 ジョーイは詩織の手をはたき、一息いれて間を置くと、詩織に面と向かった。

「あのさ、なんで俺なんだ。詩織のことを思ってる男は他にいるだろう」

「でも私が思いを寄せるのはジョーイなんだもん。それに……」

 詩織は言葉に詰まってしまう。

 ざわざわと駅の中のうるさい音が急に耳につく。

「なんだよ、急に黙り込んで。用がないのなら俺帰るから」

 詩織の目が水面のようにせせらぎ、水気をたっぷりと含んでいく。

 リルの時もそうだったが、どうしてこういう展開になるのかジョーイは頭を抱えてしまった。

 しかし、詩織の涙の中に複雑な心境が含まれているのが見える。

 この状況ではその涙の訳を聞くのが筋だと、ため息を一つついて観念し、詩織を見つめた。

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