ロストマーブルズ
「わかったよ。でも俺はお前とは友達だが、恋人ではない! そこだけはっきりさせておく」

「でも私がジョーイを思い続けていてもいいよね」

「それは詩織の自由だ。だが、俺には何も期待するな」

「うん、これからはジョーイに好かれるように努力して、いつか振り向いてもらえるように頑張る」

「無駄なことは頑張らなくていいぞ」

「でも、ジョーイは一生恋をしないつもりなの?」

「そんなの知るか! マイナス1点!」

「は? 何よそれ」

「はい、解説します。俺が気に入らなかったことを発したときや、または行動で表したとき、点数をつけることにしました。マイナスの数が増えれば、どんどん離れて、最後には友達解消です」

「えー、ちょっと、それ嫌だ。あっ、でもプラスになればいいんだ。だったらそれグッドアイデアかも。点数が10点になったとき、私のこと考えてくれる?」

「それはありません。プラスの点数はつけないことにしてます」

「ジョーイ!」

「とにかくだ、俺の気に障ることをするなよ」

「ううん、約束できない。だって私はありのままの私でいたいから」

 詩織は吹っ切れたような笑顔をジョーイに向けた。
 やっぱりそれは詩織らしい清清しい潔さに見えた。
 そういうところはジョーイ自身羨ましく思えるのだった。

 詩織は嫌いではないとジョーイは軽く詩織の頭をこついた。
 詩織の目は先ほどの涙で潤っていたが、それが効果的により一層輝きを増す。

「ジョーイ、それじゃまたね」
 詩織のプリーツの入ったスカートが軽やかに揺れて、これ以上の長居は必要ないとばかりに自ら引き際を見せる。
 後腐れないところは気に入った。

「プラス1点……」

 ジョーイが小さくつぶやくが、詩織の耳に届くことなく、詩織の姿は押し寄せてくる人ごみに同化されていた。
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