ロストマーブルズ

 硬くなって突っ張っていたジョーイの体は限界だとばかりに突然力が入らなくなり、持っていた箸をぽろっと落としそうになった。

 はっとして慌てて箸を掴み直す。

 何を動揺しているのだろう。

 落ち着こうとばかりに目の前の大豆の煮付けを一粒挟んだ。
 そして平常心を心がける。
 それはいつもの自分の姿であるのに、なぜか無理をしているように思えた。


「特別っていうより、奇抜で謎めいてるだけで真相を知りたいだけだろ。それにまだハリウッド女優だって決まったわけじゃないし、ほんとのそっくりさんなだけかもしれない。迎えに来ていた人もキノの親の可能性もあるだろ」

 言い終わると、ジョーイはぱくっと豆を口に放り込んだ。

「まあな、勝手に俺らが推測してるだけに過ぎないのは分かってるけど、あのコンビニ事件はキノの企んだことなのははっきりしている。やっぱり只者じゃないだろう」

「それで、英会話ボランティアではどんな行動だったんだよ」

「ああ、俺もそうだけど、眞子ちゃんの指示で動いてたから、別に変わったことはなかった。普通にボランティアで来ていただけだった」

「お前、先生のこと眞子ちゃんって呼ぶのは止めろよ」

「いや、それが本人も気に入ってるみたいで別に注意はされてないぜ」

「本人に向かってその呼び方だったのか……」

「うん。あっ、そういえば、俺が眞子ちゃんって呼ぶとキノのやつ眞子ちゃんの反応見てた。キノも俺がそう呼ぶことに対してびっくりしてるのかな」

「一体クラスには何人いて、どんなことやってんだよ」

「気になるんだったら来ればいいじゃないか」

 ジョーイがその質問で黙り込んでしまうと、社交的ではないのは充分理解していると言わんばかりにトニーは優しく負担にならないように笑みを浮かべる。

「意地張ってないで、一度来てみないか。ジョーイがくれば眞子ちゃんも喜ぶと思うぜ。明日来いよ」

「なあ、そのボランティアって毎日あるのか?」

「クラブ活動みたいだし、レギュラー人は毎日かもしれないが、ボランティアは気が向いたらいつでもいいってことになってる。一回こっきりでもOKってことさ」

「そっか」

「じゃあ決まりだね」

 ジョーイは行くとはっきりと答えた訳ではなかったが、トニーによって決め付けられた。
 だがそれを全く否定せずに、茶碗を持ちジョーイはご飯を口に入れ、ただ黙々と食べていた。

 世話がかかるとでも言いたげな目をしながら、トニーもまた黙って食べていた。
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