ロストマーブルズ
「それ、他の人にもいわれましたが、私の犬とは関係ありません」

 キノにきっぱりと言い切られ、ジョーイは「えっ」と声を出した。

 実際自分は一部始終を見ていた。
 彼女の嘘は明白なのは分かっていたが、こうもはっきりと否定されると自分の見たものが信じられなくなってくる。

「だけど俺、キノがコンビニに犬と入るところ見てたんだ。その後あの事件が起こった。どうして嘘をつくんだ」

 ジョーイは不信感を募らせた。

「ジョーイもどうして私にそんなこと聞くの? それを知ってどうなるというの? ただの好奇心だけで色々と聞かれるのは迷惑だわ」

 キノも気分を害した言い方だった。二人の間に気まずい空気が流れていく。
 それならばと売り言葉に買い言葉でジョーイは思ったことを勢いでぶちまけてしまう。

「詩織を痴漢から助けたことも、あれもキノが分かっててやったことだろう。他にも何かと事件に関わって色々とやってるんだろ。なぜ隠そうとするんだ」

「何がいいたいの?」
「だから、どうしてそんなことをするんだ。それに君は他にも人に言えないことがあるんじゃないのか」

 キノはジョーイの顔を思わず見つめた。
 どこか挑戦するような厳しい目つきが眼鏡のレンズから覗いている。
 そしてゆっくりとジョーイに問い質した。
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