ロストマーブルズ
「それじゃ私が人に言えないことって何?」
「えっ、それはその、キノが有名な人物とか」
「有名な人物? なんの話? ジョーイは何か勘違いしてるんじゃないの」
「じゃあ、ミラ・カールトンって知ってるか?」
「ミラ・カールトン? 知らないわ」
「キノ自身がミラ・カールトンじゃないのか? ハリウッド女優の。そしてお忍びで日本に来ている。そこでいろんな事件に巻き込まれて、素性がばれるのを恐れて色々と誤魔化している」
「えっ?」
 一瞬、何が起こっているのかわからなかったが、キノは大いに笑い出した。

「ジョーイ、申し訳ないけどあなたの空想にはついていけない」
「空想? 違う! 君は嘘をついている。少なくともコンビニ事件のことは俺は確かにこの目で見ていた。どうして嘘をつくんだ」

 笑われたことで少しむっとムキになり、白黒はっきりさせないと収まらないくらいジョーイは責め立ててしまった。
 キノはジョーイの声を荒げた態度に少し考えるしぐさを見せた。どこか迷いを生じながらも穏やかに口を開く。

「ジョーイ、ここまで話がややこしくなっているのなら正直に言うわ」

 ジョーイはまた息を呑むようにキノを見つめた。

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