ロストマーブルズ
「おーい、キノ!」

「聡君」

 聡が近づくとツクモも立ち上がり、聡の側に寄って思いっきり尻尾を振って歓迎していた。

 聡は挨拶代わりにツクモの首あたりを両手で掴むように撫ぜている。

 その時ジョーイは、確かにこの男の子に「バーカ」といわれたと思いながらじろじろと見ていた。

「今日は絶対キノのためにホームラン打つからな」

 聡はかっこつけて言い切った。

(キノのために…… っておいおい)

 子供ながら大胆に発言する聡に、ジョーイはませてると冷めた目つきになってしまう。

 聡は視線を感じて負けずにジョーイを睨み返していた。

「ねぇ、この人誰?」

「同じ学校に通ってる人」

 キノがもじもじと答えると、益々面白くないと聡の目つきが険しくなった。
 以前バカと罵ったことは全く覚えてなさそうだった。

 だがその発言にふさわしく、聡はやんちゃでどこか生意気そうな雰囲気が漂う。

「ふーん、なんか気にいらねぇ」

 子供らしいといえばそれまでだが、どこかライバル意識をもったピリピリとしたものも伝わってくる。

 ジョーイも生意気なふてぶてしさではいい勝負だと、聡を見て粋がったように口元の端を片方上げて応えていた。
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