ロストマーブルズ
「ジョーイだ。よろしくな」

 一応挨拶をしてみたが、聡はふんと首を横にフリ無視をした。

 益々かわいくない奴だと思ってみたが、どこかで見たような光景にジョーイは鏡を見ているような気分になった。

「俺、絶対頑張るからな。キノから教わったこと全部やってみる」

「うん。頑張ってね。ツクモも応援してるからね」

 ツクモも一緒になって「ワン」と一回吼えると、聡はまたツクモの頭を撫ぜた。

「ツクモ、お前ほんとに変な名前付けられたよな」

 ツクモが聡に前足を出して飛びつき、聡の顔を舐め始める。

「ツクモ、わかったよ。そうだよな、いい名前だよな」

「聡君、そろそろ試合始まるよ」

「うん、そろそろ行かなくっちゃ。だけどさ、キノ。なんで今日はそんな変な眼鏡掛けてるんだ?」

「えっ?」
 驚いた声を出したのはジョーイだった。

 キノが聡の指摘にあたふたしていると「聡! 早く来いよ!」と遠くから声が聞こえ、聡は慌てて走っていった。

 ジョーイは聡が言った言葉が耳に引っかかり、キノの眼鏡をじっと見つめた。
< 175 / 320 >

この作品をシェア

pagetop