ロストマーブルズ
 必死に頼み込むキノの声を肩越しに聞きながら、ノアは黙って運転をする。
 助けてやれないもどかしさでハンドルを持つ手に力が入っていた。

 シアーズはノアにも影響が出ていると気がつく。

 この先に抱く不安はシアーズも未知のものであり、しっかりと管理する立場ながらどうしていいものかと困惑しだした。

 自分に置かれている立場と、それに係わる者達の心情を考えると自分自身も心苦しくなってきた。

 つい苛立って声を荒げてしまう。

「(これでもキノの願いは受け入れたつもりだ。できることなら協力してやりたいが、事態はそうは行かなくなった。キノはどういう立場なのか自分で分かっているはずだ。このままでは真実はいつか暴かれジョーイが傷ついてしまうんだぞ。そしてジョーイの父親も危険に晒される。それでもいいのか)」

「(もちろんそれは一番さけたいことです。だけどその前に私はもう少しだけジョーイの側に居たいんです。今離れればもう二度とジョーイに会えません。決して危険なことはしないと約束します。だから……)」

 キノはしつこくすがった。
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