ロストマーブルズ
「グッモーニン、エブリワン」

 シアーズが静かに挨拶をし、冷めた目つきでちらりとキノを見つめてからジョーイに視線を投げかける。

「(ジョーイ、珍しく青春か?)」

 普段ならきっと「放っておいてくれ」と憎まれ口を叩いただろうが、ジョーイは「まあな」と曖昧に返事をしていた。

 シアーズもこれには驚いたのか、眉を少しピクリとあげた。

「(そっか、まあほどほどにな)」

 そういい残して他の生徒に目を向け挨拶をしていた。

 キノはシアーズを気にしながら葛藤していたが、それを振り払いジョーイに微笑んだ。

「ジョーイ、それじゃまた後でね」

 先にキノは走って去っていった。
 リルは不機嫌にキノを気に入らないと見つめていた。

「おいリル、いい加減に手を離せ」

 リルは渋々とそれに従った。

「ねぇ、ジョーイ、どこにもいかないで」
「俺、一体どこに行くんだよ。リル、言っておくが、俺はお前の知っているお兄ちゃんじゃないし、その代わりもできない」

 ジョーイは自分で言った言葉に突然はっとした。

(俺もキノに何を求めているんだ。俺も結局はキノをアスカという存在を通して見ているに過ぎないんじゃないのか)

 この気持ちをキノにぶつけていいものなのか、突然心に迷いが生じてしまう。
 暫く回りのことが見えないままに突っ立っていた。

「どうしたの、ジョーイ?」

 袖を引っ張られリルの声で我に戻る。何かを振り払おうと首を振り、放って欲しいとばかりに声を発した。

「リル、それじゃまたな」

 逃げるように走り去った。

 リルは寂しげにジョーイを見つめていた。
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