ロストマーブルズ
 その放課後、ジョーイはトニーに引っ張られて英会話ボランティアの教室へと連れて行かれた。

 中に入れば十数名の男女が一斉に振り向き、女生徒たちは明るい声で「ハロー、トニ-」と迎える。

 男子生徒も手を掲げ、ハイファイブと称してトニーの手のひらに軽くタッチしていた。

 トニーはここでもすっかり人気者として祭られている様子に、ジョーイは感心していた。

 女生徒たちがチラチラとジョーイを見てそわそわしだすと、それに気がついたトニーはジョーイを突き出して紹介した。

「俺の友達連れてきた。ジョーイだ」

 ジョーイはとりあえず手を挙げて小さい声で「ハーイ」と挨拶すると、待ってましたと女生徒たちが群がってきた。

「おい、俺よりもジョーイの方がいいのかよ」

 トニーが臍を曲げると、男子生徒達が慰めに集まってくる。

「俺には男しかこないのか、仕方ねぇーな」

 男達にノリよく抱きついて、トニーは持ち前の明るさでおどけていた。
 
 和気藹々とした雰囲気の中、キノが教室の入り口に現われた。

 皆、元気良く挨拶し、同じように歓迎する。
 
 ジョーイが居たことで、キノは少しびっくりしてたが、嬉しいとすぐに頬が揺るんだ。

 ジョーイも口元を少し上げ、はにかみながらそれに応えていた。

 キノは入り口付近で、後ろを振り返り、暫く誰かと揉めだした。

「リル、ほら、早く入って」

 キノが引っ張るようにして教室にリルを入れた。

 それに一番驚いたのはジョーイだった。
< 211 / 320 >

この作品をシェア

pagetop