ロストマーブルズ
「だってジョーイは女の子達の間で人気者でしょ。そんな人にあんなことができるなんて滅多にないことだからついやっちゃったって感じ。初めて会ったとき、私がおどおどしてたのも、ジョーイがまさか私の側にくるなんて思わずに、緊張してたの」

 ジョーイはまた言葉を失う。

 結局は、お互いの恋の感情なんて二の次になっていく。

 だがキノがあやふやにしようとしたことで、却って目覚めてしまった。

 ジョーイの気持ちは、収まりきれないところまで来ていた。

 きっかけはそれぞれなんであれ、ジョーイはキノが気になって仕方がない。
 はっきり伝えなければ後悔する。

 それが恋として求めているとジョーイはもう認めていた。

 心の赴くままに、ジョーイは自分が何をしたいのか自問自答する。

 キノの側にいて気がついたことは、自分の感情が自然と噴出して心地よかったことだった。

 キノがアスカを思い起こさせるなどもうどうでもよくなってしまった。

 ジョーイは殻をやぶったように突然感情があふれ出し、そのまま思ったことが口から出てしまう。

「なあ、キノ。お互い変なところから入っちまったけど、どうだろ、俺達付き合わないか。俺はもうこの気持ちに無視はできないんだ。キノは俺のこと恋愛の対象には見られないか?」

 自分の口からそんな言葉が出るとはジョーイも驚いていたが、それと同時に自分の言葉に反応して最高に胸がドキドキと高鳴っていた。

 キノは眼鏡がずり落ち、レンズを通さずに眼鏡と顔の隙間からジョーイを驚いて見上げていた。

 ホームに電車が入るアナウンスが流れ、辺りが動き出しても、二人は動かずそのまま見詰め合っていた。
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