ロストマーブルズ

 電車はホームに到着し、乗客が乗り降りする中、それでも二人は動かずにいた。

 キノは麻痺して電池のない玩具のように動かない。
 ジョーイはキノの言葉を辛抱強くずっと待っている。
 このままでは電車に乗り遅れると判断したジョーイは、キノの手をギュッと握り締め、引っ張って乗り込んだ。

 だがその手を電車のドアが閉まっても、動いても、ジョーイはずっと離さなかった。
 キノも時が止まったように動かず、抵抗もしなかった。

 二人はいつもそうしているように、ドアの前に立つ。
 外がすっかり暗くなった窓は、車内の明るさで反射し鏡となって二人を映し出していた。

 静かな場所を見つけるまで、二人は結果を保留にした状態で電車に揺られていた。
 暫しの間、これが青春の貴重な一ページだと自覚するほど二人は胸を一緒にドキドキさせていた。

 駅に着いて多数の乗客に紛れて降りたが、皆一斉に同じ方向を目指して歩いていく中、ジョーイとキノは動かず手を繋いだまま薄暗いホームに残っていた。

 ホームから人が去ってしまい、周りには誰一人いなくなった時、やっとキノが口を開いた。

「ジョーイ」
 搾り出したか弱い声。
 ジョーイは息を飲んだ。
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