ロストマーブルズ
「リル、あんた買わないの?」

「私はいい」

 その女の子は、ボソリと返事した。

 残りの女の子たちは一人だけノリの悪い友達に一瞬しらけた顔つきになったが、仕方がないと自分たちだけお金を払いにレジへと向かった。

 しかし途中で、またかわいいものを見つけて立ち止まり、いつお金を払って店から出て行くのか予測不可能だった。

「私、先に外にでているね」

 リルと呼ばれた女の子は、せかしたかったのか一人で店を出て行く。

 出口付近でジョーイとすれ違い、ちらりと一瞥を投げかけた。

 ジョーイは見て見ぬふりを決め込み、ただじっと立っていた。

 リルが店から出て行くと、タイミングよく女の子たちの話す声が聞こえてきた。

「高一になったばかりで新しく知り合って席も近かったから声を掛けたけど、あの子はなんか苦手かも」

「でもリルって過去に事故にあってからトラウマを引きずって暗くなっちゃったみたい。お母さんも日本人じゃないし、その事で、からかわれたりしてたって噂も聞いたことがある」

「悪い子じゃないし私たちだけでも理解してあげようよ」

 それぞれ話していた。

 ジョーイはすっかり女の子たちの話を耳に入れてしまった。
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