ロストマーブルズ
 アスカの名前を何度も耳にして、キノを見て他にも同じ名前のアスカを思い出す者の出現。

 キノの不可解な行動も拍車をかけて、ジョーイは過去の記憶と現在の出来事が混ぜ合わさって、何を明確にすべきなのか混乱していった。

「そっか、大変だな。でもキノと君の妹のアスカは別人だ」

 ジョーイはまるで自分にも言い聞かせているようだった。

「わかってる。でも人は気になる過去の記憶をすり替えようと、今の状況に置き換えて解決したいって思うことってないかな」

 ジョーイは詩織の言葉にどきりとした。

「そうだな。あるかもな」

 なぜかぐっと手足に力が入る。

「詩織、今日はいろいろと話させちまって悪かったな。でもありがとう」

「へー、ジョーイは律儀でもあるんだ。そういう面も見ちゃうと益々心惹かれちゃう」

「あのさ、何度も言うけど、俺はそういうの……」とジョーイが言いかけたとき、詩織が声色を使って後を続けた。

「…… 興味ないから、だって俺は男の方に興味あるから」

「おいっ、何を言うんだよ! いい加減にしろ」

 ジョーイは冷たい目つきで詩織を睨んでいた。
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