秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

「いえ、聡さんが召し上がってください」


こんなことまで気遣われると、恐縮してしまう。


「ダメだよ。商談中に腹が鳴ったら困るだろ」

「はい。……それでは」


結局、強く断りすぎるのも悪いと思い、おにぎりを食べることにした。


「大丈夫。落ち着いて」

「えっ? ……はい」


聡さんにも私の緊張が伝わっていたらしい。
本当に秘書失格だ。


「高畑さんがテンパってたんだよね。珍しく、広瀬が、広瀬が……ってなんか焦っててさ」

「そうなんですか?」


私が聡さんの部屋を出てからだろうか。


「広瀬さんしっかりしてるから大丈夫って言ったんだけど、社外にひとりで出すのは初めてだからって。初めて子供を旅に行かせる父親みたいだった」


聡さんはそのときのことを思いだしたのか、「フッ」と笑う。
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