秘書室室長がグイグイ迫ってきます!

彼はマンションの前に車を停め、助手席の方に回り込んできてドアを開けてくれた。
もうこの頃になるとぐったりして、声を出すのもつらい。


「まったく、どれだけ我慢してたんだ。鍵を出せ」


高畑さんに盛大に呆れられながらなんとかバッグから鍵を取り出して渡すと、彼はなんと私を抱き上げた。


「重いですから……」

「黙ってろと言ったはずだ」


こんなときにまで威圧してくる。
でもそれが彼の優しさなのかもしれない。


私を軽々抱き上げ部屋に入った彼は、すぐにベッドに私を下ろした。

1DKの我が家は、玄関を入っただけで部屋中を見渡せる。


「風呂、入れてやる」

「えっ!」


ちょっと待って……。

慌てて止めようとしたけれど、彼はすぐに浴室を見つけ、入っていってしまった。
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