笹に願いを
「痛いか?ひげ」
「あ、ううん。チクッとするけど。いつもみたいに」
「やっぱ剃った方がよくね?」
「ダーメ。無精ひげあってのあま・・義彦なんだから。剃っちゃったらあなたじゃなくなっちゃう」
「うわ。マジで?」
「マジよ。それに、チクッとするけど“痛っ”てほどじゃあないから。絶対ひげ剃っちゃダメ」
「そこまで妻に言われちゃあ、童顔をひげでカバーするしかないわなー」

・・・あの日。
もう一つの、絶対に現れる副作用である脱毛が、すさまじい勢いで始まった日に、天野くんは私に「結婚しよう」と言ってくれた―――。

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