笹に願いを
私にキスしたのに。
まるでそれが当たり前だという感じにふるまってるし。
私は天野くんの顔が近づいて来たときから、ビックリして目開けたままだったのに。
でもっ!唇が触れ合った2秒くらい後には、咄嗟に目つぶったけど!
「じゃーなー」と言ってエレベーターの方へ歩く天野くんは、いつもどおりの涼やかな表情をしていたし、歩き方もいつもどおり落ち着いてるように見える。

なんだろ、この差は。
まだ鼓動のドキドキ感じてるし!
ファーストキスじゃないっていうのに・・久しぶり、ではあったけど。

でも、天野くんとキスしたのは、これが初めて。

私は天野くんがエレベーターに乗るまで、彼の姿をずっと見ていた。
エレベーターに乗った彼が、私を見ながらニッコリ笑って右手を上げたとき、私も笑顔で右手を上げて応えていた。

それまで自分の右手をずっと唇に押し当てていたことに、やっと気がついた。

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