笹に願いを
天野くんの前では強がってみたけど、やっぱり緊張する。
手術なんて、生まれて初めての経験だし。
それに・・・これで私は卵巣を失うことになるし。
緊張の中に恐怖も加わって、ベッドに横になっても全然眠れない。

「眠れないんでしょう?大抵の患者さんがそうですから。明日の手術に影響はありませんので、飲んでも大丈夫ですよ」と看護師さんに言われて、頼んでないのに彼女が持って来てくれた睡眠薬を飲んだ。

それでも、なかなか眠れなかった。
ベッドに横になっても、眠気は全然来ないので、天野くんからもらったばかりの自撮り写真を見ていた。

天野くん。手術、上手くいくよね?
ガンはどこにも転移してないよね?

私は、天野くんと私自身に言い聞かせるように、繰り返し心の中でそう問いかけながら、いつまでもスマホ画面を見ていた。

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