笹に願いを
16
結局、ほとんど眠れないまま夜が明けた。
7月25日。
今日、私の卵巣は摘出される。







午前11時、予定通り手術開始。
手術自体生まれて初めての経験である私は、ベッドに寝たまま手術室に運ばれるのも、手術室に入るのも、今回がもちろん初めてだ。
テレビドラマとかで手術室のセットは見たことあるけど・・あぁ、この・・・寒々しい雰囲気にのまれそう。
絶対腕に鳥肌立ってるよ。
実際ブルッと身震いした私は、ギュッと両目をつぶった。

怖いよ、天野くん。
早く手術終わってほしい・・・。
全身麻酔も今回が初体験だ。
怖い。
でもこれは、手術が始まるという証。
それに、先生や看護師さんたちの声や手つきは、とても優しい。
きっと緊張している私を、リラックスさせようとしてくれているんだろう。
さすが、先生方は経験豊富なプロフェッショナルだ。信頼しよう。

どうやら麻酔の投薬が始まったらしい。
看護師さんたちの声が聞こえる。キビキビしてるな・・。
誰か・・看護師さんかな。数を数えてる?
最初は微かに痛み?みたいな、なんか変な感じしたけど、今は全然・・何も感じない。

天野くん。先生。どうか、おねがい・・・わたし・・・・・・眠い。

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