笹に願いを
天野くんと岡部編集長が病室に来てくれたのは、私が手術を終えて病室(ここ)に戻ってきてからだいぶ後、時刻は午後5時を過ぎていた。

「笹川ちゃん」
「よーぅ。おっりえ~」と言った天野くんは、色鮮やかで大きな花束から、ひょいと顔を出した。
左手には、白い陶器の花瓶を持っている。
何気に用意がいい。
私の視線に気がついたのか、天野くんは「実は編集長に言われて気づいた」と白状した。

「やっぱりね。でも嬉しい。ありがとう」
「編集部のみんなからだ。花瓶に活けてくる」と言って病室を出ようと歩く天野くんの背中に向かって、私は「ありがとう」と言った。

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