オトナの恋は強引です!
正面玄関に近い応接室で
向かい合って、座る両親と、濃紺のスーツ姿のドラゴンが見えた。
髪をなでつけ、今日は出来る男風に仕上がっている。

「ど、どうしたの?竜二さん?」と驚いた声を出すと、
「ムギちゃんがサクラがお見合いを勧められてる。って、
今日実家に帰ってる。って言ってたから、挨拶しておかないとって思って。
僕と付き合ってるのに、お見合いなんて困るな。」と私に笑いかけ、
「寝癖ついてるよ。サクラ。」と更に私に微笑んだ。
「どうしてここが…」と声が出る。
「嫌だな。あのマンションのオーナーって俺でしょ。
契約者の事はすぐにわかるよ。」とにっこりした。

私は声が出せずに、両親を見ると、
「この男と付き合ってるのか?!」と父が怒った声を出す。
「つ、付き合ってるって言うか…」とつっかえながら言うと、
「付き合い始めたばかりなので。」とドラゴンが続けるので、私がコクコク頷くと、
母は長い溜息をついてから、
「サクラ、『神無月の間』が空いてるわ。お通しして。」と私に言って、立ち上がり、
「社長、お客様がいらしてますよ。」と父の腕を取り、出て行った。

「なんで勝手に来たの?!」と私はドラゴンを振り返ると、
「喧嘩は後にしようぜ。サクラ。俺もいろいろ聞きたい事がある。」と機嫌の悪い顔をして、
「全く、見合いなんて冗談じゃないぜ。」とネクタイを緩める。

「竜二さんには関係ないでしょ。」と言うと、
「おまえはどういうつもりで俺の背中に爪を立ててんだ。」と怒った顔をする。

私は顔が赤くなる。

「ハイハイ。楽しそうな話だけど、部屋でやって。
従業員のみんなが興味深々なんだけど。」と兄が入ってきて、
「俺はサクラのアニキで瑞希(みずき)。30歳。
あんた、ずいぶん年上だけど、こんなに生意気なサクラのどこが良いの?」
と手を出して握手をしてる。
「生意気なところ。と、寝癖が可愛いところ。」とドラゴンは言って、アニキと笑った。

あんた達馬鹿でしょ。
私は呆れて黙り込んだ。


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