クラウディアへようこそ

「営業部です」

“お前なあ……勝手に切るなよ”

「すみません。まだ、慣れていないもので……」

苛立っているのが電話越しでも伝わってきて、恐縮してしまう。

どうやら、一色社長には電話を取ったのが私だと分かってしまったようだ。

「いつ、お戻りになったんですか?」

“昨日の夜だ”

「昨日帰って来てもうお仕事ですか?」

海外旅行にはつきものの時差ボケすら、一色社長には関係のない出来事らしい。

“お前こそ、営業部に配属になって忙しいんだろ?”

「確かに忙しいですけど……皆さん、とっても良くしてくれています」

“そうか。何かあったら直ぐに言え”

……直ぐに言った結果、どうなるかはあまり考えたくない。

それにしても自分の勤める会社の社長と、内線で世間話をしているなんて不思議な気持ちである。

「それで、ご用件は何ですか?生憎、お昼休み中は皆さん出払ってらっしゃいますけど……」

“……今夜、暇か?”

「暇かって……誰の予定を聞いてらっしゃるんですか?」

“お前に決まっているだろう?”

「どうして私の予定を聞くんですか?」

意味が分からなくて尋ね返すと、一色社長が呆れたように盛大なため息をついた。

“食事に誘っている、と言えばわかるか?”

(……食事?)

私と、一色社長が?

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